8月4日(木)葵の会の8月例会は久しぶりに古典講読から離れて『3世桐竹紋十郎 文楽の深淵』というBS日経の番
組をたのしみました。
世界最高の人形芝居・文楽は2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
時代物として仮名手本忠臣蔵、義経三本桜、妹背山婦女庭訓など、世話物として曽根崎心
中、心中天網島、冥途の飛脚など歌舞伎でお馴染みのものがありますが、実は文楽で作ら
れたものです。
江戸時代初期に人形芝居と浄瑠璃が出会って人形浄瑠璃が生まれ、幕末に植村文楽軒が
私財を投じて人形浄瑠璃専門の文楽座を設立して、そこから「文楽」という名前が定着しました。
義太夫節という情感あふれる太夫の語り、三味線、人形遣いの三業一体の文楽が成立したのです。主遣い(ぬしつ
かい)、足遣い、左遣いの3人の人形遣いが呼吸ぴったりに演じますが、足遣い、左遣いを各10年やって、はじめて主
遣いになれるそうです。
国立文楽劇場は以前橋下大阪市長が補助金を廃止しようとして、世間から『文化知らず』と厳しい批判を受けた施設
です。大阪で125年ぶりに桐竹勘十郎が幻の演目『玉藻前あさひの袂』という一人で人形9変化に挑戦する番組です。
主遣いは舞台初日7日前に「人形拵え」という人形の衣裳を役柄に合わせたものにする作業をします。『役の性根を
つかみきれないと人形を動かしても、その役に見えないので、人形拵えからその役に入っていく』と勘十郎はいいます。
舞台初日4日前には「道具しらべ」という舞台セットの修正を行います。同3日前に、基本的には1回だけという「全
体練習」を行います。
今回の9変化に人形遣いは17人。主遣いの指令は人形の肩から首の動きで、これを「頭(ず)」といい、それを見て足
遣い、左遣いの人形遣いは瞬時に判断します。文楽300年の歴史です。さまざまな「型」が「様式化」されているので
す。たとえば『女殺油地獄』でも床など油まみれの状態をいかに演じるか、3人の呼吸次第なのです。
9変化は九尾、座頭、在所娘、雷、いなせな男、夜鷹、女郎、奴、玉藻前です。「持ちかえた人形の役にすぐになりきる
むつかしさがある」と勘十郎はいいいます。
男の人形には足があるが女の人形にはありません。舞台の前方に手すりという目隠し、船底という1段低い床があり
、これで人形の動きが客席からは自然に見えます。
舞台の右方に「床」という太夫と三味線弾きが座るコーナーがあります。
太夫が語る文楽の台本を床本(ゆかほん)といいます。太夫は語りの調子で登場人物を表現し、三味線も弾きわけます。
足遣いの姿勢が楽になるように、主遣いは人形の大きさに応じて20~50センチの高さのある高下駄・舞台下駄を履き
ます。左遣いは右手で人形の左手をつかみます。足遣いは女性の着物の裾を両手で抑え、左足から立ち、立膝は握りこぶ
しで表現し、足音を立てる役目もします。
なお 文楽の鑑賞については杉本哲雄さんにお世話になりました。午後の木曽路での暑気払いは、今や葵の会の最大の
勢力である22期生の方々が幹事役となって、全員参加の一言スピーチ、歌のほか、トークショウありの暑気払いをたの
しみました。
みなさん ご苦労様。
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