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さ~て、今日は「たにしとタヌキのかけくらべ」のお話をします。
う~う?「たにし」なんて見たこともない?
そうね。この頃は、近くにたにしの住む田んぼもないし、沼や川でも見かけないものねぇ。
では、たにしの写真を見てみましょうか。
こんなに可愛い巻貝の一種です。
わしらの子どものころには、田んぼや川にたにしがた~くさんいて、
子供同士でよく捕って遊んだものでした。
では、どんなお話しか、よ~く聞いてくださいね!
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「たにしのやせ我慢」
むか~し、むかし、所沢の小さな沼に、一匹の負けず嫌いなたにしが住んでいたそうな。 |
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3 |
たにしは、
たにし:「一生に一度はお伊勢参りをしたいもんだなぁ~
でもなあ、こんな小さな体では、到底お伊勢さんまで行かれっこない。
何かいい知恵はないもんかなぁ・・・」
といつも考えていた。
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4 |
さて、ある日のこと、沼のそばをすっかり旅支度をしたタヌキが通りかかつた。たにしは急いで沼の端っこから
たにし:「タヌキどん!タヌキどん!」と大きな声で呼び止めた。
タヌキは、はたっと立ち止まって、きょろきょろとあたりを見回していると
たにし:「タヌキどん!」
と、もう一度声を掛けた。
タヌキはやっと沼の端っこにいたたにしに気が付いた。
口の悪いタヌキは、たにしを見て
タヌキ:「おまえはあいかわらず豆粒みたいに小さいなぁ~」
と、馬鹿にして言ったと。すると、たにしも負けてはおらず
たにし:「でも、かけっこではぜったい負けないよ!」
と、とんでもない強がりを言ったそうな。そうしたら、タヌキは
タヌキ:「ほお~、そうかぃ、よ~し、そんならかけくらべしようや!
お前なんかに
ぜったい負けないよ!」
と、自信満々に言ったそうな。
たにし:「それはいい考えだね! かけっこしよう!」
その時、たにしはタヌキの格好を見て、きっとお伊勢参りに行くんだと思った。
たにし:「ところで、タヌキどん、その恰好は、今からお伊勢参りに行くのかい?
そんなら、おいらも連れてっておくれよ」
タヌキは連れがいるのも悪くないなぁと思って、
タヌキ:「うぅん、じゃあいいよ! 一緒にいこう!」と、太っ腹をたたいてみせた。
たにしは『これで、お伊勢参りに行けるぞ!』と、心の中で手をたたいて 喜んだ。
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5 |
そうはいっても道中は長い。たにしはタヌキと一緒に歩けるわけがないと
思っていた。
たにし:「ねぇねぇ、タヌキどん、おいらは身体が小さいので迷子になりそうだ。
いっそ 、お前さんの肩に乗せてくれないかい?」
タヌキ:「ええ~?」
と、タヌキは驚いて、ちょっと首をかしげたが、
タヌキ:「ううん、まぁ~いいや、途中までだよ。しっかりつかまってなよ!」
と背をかがめた。たにしはタヌキの気が変わらないうちにと、タヌキの肩に「えい!」と
飛び乗った
タヌキ:「じゃ~、出かけるとするか!」
と、張り切って歩き出した。たにしは一言もしゃべらずに、必死にしがみついていた。
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6 |
野を越え、山越え、いくつもの宿場町を越えて明日はいよいよ伊勢に着くという日、タヌキは
タヌキ:「たにしどん、今日で旅もようやくおしまいだ。あともうひとっ走りでお伊勢
さんだ。ここから伊勢の大神宮まで約束のかけくらべをしよう!」
と言ったと。たにしはちょっとびっくりして、
たにし:「えっ!そっ、そうだね!ここからかけっこしよう!約束だもんね。
タヌキどんには負けないよ!」
と、たにしはまぁ~た見栄を張って言ったと。たにしはぴょんとタヌキの肩から飛び降りた。
タヌキは、
タヌキ:「おれ様が、小さいお前に負けるわけないだろう~。えへへ。用意はいいかい。 よ~い どん!」
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早速、タヌキは全速力でかけ出した。
たにしは、今度は素早くタヌキのしっぽに必死にしがみついた。
タヌキはそうとは知らずにうしろも振り向かず、まっしぐらにどんどんかけて行ったと。
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8 |
やがて、大きな石があったので一休みしたそうな。
タヌキ:「のろまなたにしは、まだまだ来そうもないな!」
タヌキがそうつぶやいた時、たにしはぴょんと石に飛び移って、すました顔で言ったと。
たにし:「のろまはお前さんだよ。おいらはとっくにここへ来て、お前さんが
来るのを
待っていたんだよ」
それを聞いたタヌキはびっくりした。それでも、先に来ていたと言うたにしを不思議に思うこともなく、
タヌキ:「よ~し、もう一度やろう。今度こそは絶対に負けないぞ!」
と言って、すぐさまかけ出したそうな。
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9 |
たにしは、またまたタヌキのしっぽに急いで飛び乗ったと。
タヌキは、ぐんぐんぐんぐん、前よりももっと威勢よくかけていった。
たにしは、振り落とされまいと、しっぽに体を沈めて必死にしがみついてい
た。
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10 |
やがて、大きな岩があったので一休みしたと。
タヌキはこんどこそは絶対に、たにしに負けてはいないと自信ありげに汗をふきながら、
しっぽを二三度岩にたたきつけたそうな。
タヌキ:「どうだぁ おいらの勝ちだい!」
その時、タヌキのしっぽにつかまっていたたにしは驚いて、とっさに飛び上がろうとしたが、
間に合わなかったと・・・
たにしは、岩に思いっきり打ち付けられて殻が割れてすっかり取れてしまったそうな。
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しかし、たにしは殻もなくなって可哀そうな姿になっていたが、タヌキに
向かって、
こう言ったと
たにし:「はぁ~ はぁ~ おいらはとっくにここへ来て殻を脱いで汗を拭きながら
お前さんが来るのをまっていたんだよぅ~」
と、たにしは、はぁ~はぁ~はぁ~と、走り疲れた振りをしながら痛さをこらえて精一杯のやせ我慢を言ったとさ!
タヌキも、はぁはぁ~と息を切らしながら、不思議な気持ちでたにしをじ~と見ながらタヌキはこう言ったと、
タヌキ:「たにしどん、大丈夫かい??」
やれやれ・・・
うっ? それからどうしたかって・・・?
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12 |
そうねぇ~。
殻もなくなって、たにしは大丈夫かしらねぇ~?
タヌキに助けてもらって、空っぽの殻を見つけてかぶったりして、
ちゃんと所沢に帰ってこられたかしら…?
みなさんは、どうなったと思いますか? このお話の続きを考えてみてください。
お話は、これで「おしまい」です。
(「小江戸の民話」所沢の民話編より)
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