2016 5 -29 記 アジア研究会 島川謙二
▼3月のある日、わが家の大蔵大臣兼秘書兼海外旅行添乗員が「5月にツァーでアンコールワットに行かない?」と誘
うので、大所高所からの判断を求められる私は「予算は?天候は?体調は?」と鋭い質問を投げかけます。添乗員が
「補正予算で対処します。5月のカンボジアは35度と暑いです。私の体調は大丈夫です」と答えるので、「補正予
算は大丈夫だね。添乗員の体調も大事だけど私の体調はどうかな?」と問うと「毎晩晩酌しているから体調はいいん
じゃない」と言うので、私は「それなら行こうか!」と決断しました。
ロシア、インドへ行った時、ビザは添乗員が大使館に行って取ってくれたので(ツァー会社に頼むと高いのです)、
今回も「私が行ってもいいのだが・・・よろしく」と言いました。
「たまにはチョッピリ贅沢に、非日常生活をたのしむ旅に」を確認しあいました。また、私の好きなドイツ文学者で
エッセイストの池内紀さんの「ひとり旅は、するものではなく作るもの」に賛同し、私流に「ふたり旅もつくるもの
」と考えています。「成田山新勝寺を散策したいので成田に前泊するよ」と言うと、添乗員は「友だちと会うので私
は夜ホテルに行きます」だと・・・。
▼成田山新勝寺は真言宗の大本山。平安時代、関東を守る霊場として成田山が開山され「成田山のお不動さん」として
信仰を集めています。初代市川團十郎が当時の本堂・薬師堂で子授けを祈願して長男を授かって以来、市川家と成田
山のつながりは深く、屋号は「成田屋」です。大本堂の裏に広大な成田山公園があり、芭蕉や高浜虚子の句碑や池な
どがあります。昼食は参道の近江屋という老舗でウナギを食しました。
成田山公園の芭蕉の句碑 参道の薬師寺 |
▼朝、成田空港を飛び立ちベトナムのホーチミン空港を経て、カンボジアのシェムリアップには夕方に到着しました。
機内で好きなブラームスの交響曲第1番を聴きながら飲むジントニック。至福の時間でした。ホーチミン空港で待ち
時間に食べたフォーもたいへん美味しかったです。海外旅行のたのしみのひとつです。
シェムリアップ空港は昨年7月にリニューアルしたそうで、なかなか
エキゾチックな空港です。飛行機のタラップを降りるとムッと暑さが
きて、入国審査ビルまでコンクリート道を歩きます。今年の9月から
ANAが成田からカンボジア・プノンペンへの直行便を飛ばすそうで
すが、アンコールワットのシェムリアップまでは300㎞あるので、
国内線の飛行機に乗らないと不便のようです。 |
シェムリアップ上空 |
▼旅に持参した書物は、カンボジアの旅行ガイドと「蜩の記」以来凝っている葉室麟の文庫本「霖雨」だけです。これ
は一昨年の大分県日田市への「ひとり旅」(広場77号参照)で知った広瀬淡窓や咸宜園を中心に、弟の久兵衛とと
もに横暴な権力者とのたたかいを描いた作品。広瀬は江戸末期に咸宜園という私塾をつくって権力者とたたかいなが
ら次代を担う若者を育てます。400ページを旅行中に読み終えることはできませんでしたが、空港での待ち時間や
ホテルでの自由時間に十分たのしませてくれました。(つづく)
シェムリアップ空港 ホテルにて |
|