2016 6 -30 記 アジア研究会 島川謙二
▼アンコール・トム(大きな都城という意味)は、アンコール・ワットよりずっと大きく、アンコール王朝の盛大さを
誇るもので12世紀後半に建てられました。一辺3㎞の正方形、周囲12㎞が高さ8メートルの城壁と幅130メートル
の濠で囲まれています。南大門の頑丈な門構え、濠にかかる橋の両側に108体の石像があります。
アンコール・ワット 女神像 アンコール・トム 南大門への橋 |
「世界の中心・須弥山」を象徴するバイヨン寺院は仏教寺院で、49塔それぞれに四面菩薩が彫られている建築方式
は世界に類を見ないものだそうです。京唄子に似た石像には思わず笑ってしまいました。
アンコール・トム バイヨン寺院 バイヨンの四面仏像 バイヨン寺院にて
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またタプローム寺院にはカジュマルの一種のスポアンの木の太い根が遺跡にからみついて、遺跡の保存に苦心している
とか。
アンコール・トム 南大門への橋で見た仏像 アンコール・ワット 首なし像
アンコール・トム 遺跡にからみつく根 |
アンコールの遺跡には、仏教寺院にヒンズーの神々も一緒に祀られています。一見無節操にみえますが、アジアの価
値観と英知を感じます。一神教では無理でしょうね。
タイのスコタイ王朝、スリランカのシンハラ王朝、ラオスのラーンサーン王朝、カンボジアのアンコール王朝などア
ジアには広く仏教文化が栄えた歴史があります。
4年前、ベトナム中部のミーソン遺跡(2世紀~17世紀のチャンパ王国のヒンズー教の聖地)に行きましたが、
中央伽藍の一群は主に焼成したレンガを用い、アンコール遺跡と同様、迫出し構造の屋根を持つものでした。
ベトナム戦争のとき アメリカ軍の爆撃でミーソン遺跡のほか,古都フエの歴史的建造物の多くが破壊されてしまいま
した。
▼アンコール国立博物館は冷房が効いた近代的な建物。映像を駆使して、わかりやすく日本語でアンコール王朝の歴史
を学べました。特に「千体仏の間」では広い空間に大小千体の仏像が展示され圧巻でした。
シェムリアップではアンコール・ワットより高い建物は禁止されています。ホテルでも4階以下です。
見学中、はじめてスコールを経験、「今年は雨が少ないですねえ」とガイドが言ってました。
▼カンボジア宮廷のアプサラダンス 華やかな宮廷舞踊です。手の指の反りがすごい。
クメール料理はスープも魚料理、牛肉、羊肉なども美味しかったですが、私はベトナム料理の方が好きです。ホテルで
食べたタイ料理のトムヤムクンも美味しかったですねえ。
カンボジア宮殿 アブサラダンス |
とにかく暑いし 「水分補給が大事だからね」 と言いながら、昼食時から毎日冷えたカンボジアビールを飲みまし
た。昼食後にホテルで休憩時間が十分あるので全く心配ないのです。
▼今回のツアーは15人で6組の夫婦と個人参加の男性2人、女性1人で、すぐうちとけて、マイクロバス内は笑い声
がたえませんでした。「こんなに笑ったツアーははじめて」と何人もが私と握手しながら言っていました。ツアーのメ
ンバーに感謝します。もちろん添乗員にも・・・。
カンボジアの男性ガイドは33歳の独身。日本の八王子の大学に留学したので日本語は上手で、中国人観光客が増え
ているため中国語も勉強中とか。「新婚旅行はぜひ日本に!」と言っていましたが・・・。
▼帰りはシェムリアップからベトナムのハノイ経由でした。ハノイ・ノイバイ空港の第2ターミナルビルは日本の政府
開発援助・円借款(300億円)で2014年末にオープン。2012年に来たときの空港ビルは国内線専用になっていま
した。第2空港を作る計画もあるとか。ベトナムの発展ぶりがうかがえます。インフラ整備などに日本が協力できるこ
とも期待されます。
▼6月13日のテレビ東京「未来世紀ジパング」で、「国境なき医師団」の日本版とでもいうべきNPO法人「ジャ
パンハート」が紹介されていました。
保険制度がないカンボジアで、貧しい人々に無料で治療や手術を行っているそうです。医療施設や医療機器の資金は
政府のお金ではなく、民間企業や個人の寄付金です。「ジャパンハート」の医師や看護師は旅費も滞在費も自費です。
「国境なき医師団」では旅費も滞在費も支給されるそうです。
日本がアジアでできることを、地道に目立たないけれどやって喜ばれています。中国のやり方とはちがったやり方で
…。
たまには遅れた国、低開発国を旅行すると、日本の良さ、たとえばインフラが整備されていること、水道の水が飲め
、停電のない有り難さが再確認できます。
▼石澤良昭元上智大学長は、卒業旅行以来、アンコール・ワットの魅力に取りつかれて 「カンボジア人による、カン
ボジア人のための、カンボジアの遺跡の保存、修復」 を目標、ライフワークとして50年余努力しています。
アンコール・ワット、アンコール・トムの魅力はいったい何なんだろう?あの包容力でしょうか?あのやさしさでし
ょうか?自分と他者の間に垣根を設けないというアジアのメンタリティーや価値観、またみんながうまく生きていくこ
とを大切にした文化へのあこがれでしょうか?
▼森鴎外は『妄想』という短編の小説(私の読後感は哲学的随筆というものでした)で「自分は此儘で人生の下り坂を
下って行く。そしてその下り果てた所が死だといふことを知って居る」 「死を恐れもせず、死にあこがれもせずに、
自分は人生の下り坂を下って行く」 と書いています。司馬遼太郎の『坂の上の雲』 とはちがった局面に自分は居る
のだと改めて思います。
人生の下り坂を周りの景色をゆっくりと見ながら下りましょう・・・。
アンコール・ワットにまっかな朝日がのぼる瞬間の美しさを思いうかべながら・・・。 (完)
アンコール・ワットにのぼる朝日
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