ところざわ倶楽部          投稿作品       エッセイ&オピニオン

     私と秋海棠
                                                      
                                                2016 09 -05  
記 吉田 麗


 

私が小学6年生の9月に、母方の祖父が60歳で亡くなりました。東京の病院で闘病の末自宅に戻ってまいりました。

門から玄関まで敷石の両脇に秋海棠の花が見事に咲きこぼれていたのを記憶しています。

祖父は趣味の人で、離れは茶室風に建てられておりました。祖父の部屋の床の間には季節ごとに掛け軸が掛けかえられ

ており9月は秋海棠だったと思います。秋海棠が好きだったのです。


祖父が亡くなり、10数年後私は結婚して夫の実家のすぐ近くに住み始めました。

生活が始まってすぐに夫の90歳近い祖母が秋海棠の鉢をかかえてやって来ました。

凛と背すじを伸ばして太平記を読み、巻紙に毛筆で手紙を書く素敵な祖母でした。

その祖母の庭に秋海棠が咲いておりました。そして、その秋海棠が私のところにやってきたのです。

あれから40数年いまも我が家の庭に咲き続けています。


       



花が咲き、実がこぼれ、春になると芽を出し、また花が咲き、実がこぼれ、春になると芽を出しーーーー。

私も大好きになった秋海棠。残念ながら咲きこぼれるほどはなくなりましたが
今年も咲いております。