2016 11 -20 記 葵の会 島川謙二
ドイツ文学者の池内紀(おさむ)さんの「ひとり旅はするものではなく創るもの」に賛同して、ひとり旅を創ってき
ましたが、私流に「ふたり旅もするものではなく創るもの」と考えています。5月にアンコールワット、アンコールト
ムへ添乗員と「ふたり旅」をたのしみましたが(HP投稿246、247,251参照)久しぶりに九州に1週間ほど秘書
と「ふたり旅」。日頃は質素な生活ですので、旅ではチョッピリ贅沢をして非日常性の空間、時間をたのしむことにし
ています。
今回は福岡市博物館と貝原益軒の墓がある金龍寺、唐津市、太宰府・観世音寺をぶらり旅する計画。もちろん孫と会
うのも・・・。
▼福岡市博物館
福岡に行くと必ず寄る鮨の「やま中」天神本店(九州発銀河鉄道「ななつ星」にも出店している名店で磯崎新の設計
です)で昼食。美味しい鮨に大満足。
秘書と別れて2度目の福岡市博物館で半日ゆっくり福岡の歴史を勉強。小学生たちと一緒。国宝金印「漢委奴国王」
から展示はスタート。実際の金印の模造品があり、108グラムを実感しました。中国・後漢書に西暦57年「倭の奴国
」の使いに対し後漢の光武帝が印・綬を授けたと書かれており、1784年に福岡・志賀島で農民の甚兵衛さんによって
金印が偶然発見されたのです。私は数年前、志賀島へも行きましたが、歴史的に古代日本、九州の大陸、半島との交易
の要衝で、万葉集にも歌われており、1281年の弘安の役では元との戦いの舞台になりました。
▼貝原益軒と金龍寺
某日、地下鉄1日券でゆっくり市内を散策。唐人町近くで中野正剛の銅像に遭遇。中野正剛は福岡藩士の子、早稲田
大学を卒業後、新聞記者から衆議院議員へ。全体主義を主張、その後、東条内閣を批判し1943年10月割腹自殺。い
かにもという感じの銅像でした。
その先に金龍寺。貝原益軒と黒田藩の25勇士の衣笠因幡、吉田壱岐、林太郎右衛門
の墓のほか、倉田百三が療養のため境内に滞在したという碑があります。
金龍寺仁王門 金龍寺にある貝原益軒の像 中野正剛の像 |
貝原益軒は江戸時代の儒学者、本草(薬草)学者で「筑前国続風土記」「養生訓」などを著しています。1713年に著
した「養生訓」では、今、自分が生きていることは、いろいろな人たちのおかげであり、両親への感謝、自然の恵みへ
の感謝のほか心身の健康と長寿を保つ養生法が書かれています。
当時、平均寿命は35歳ぐらいでしたが、益軒は84歳の長寿を全うしました。「命の長短は身体の強弱よりも、慎みを
持って生きるか欲望のままに生きるかによるところが大きい」とか「自ら楽しみ人を楽しませてこそ、人として生まれ
た甲斐がある」など人生の指南書といわれる内容の「養生訓」です。
夕食は今回見つけた美味しいとんこつラーメン店で。
▼唐津城と歴史の散歩道
某日、唐津へ。佐賀牛ステーキ、唐津のイカの生きづくりと天ぷらをシーサイドホテルから唐津湾の美しい景色を眺
めながらいただきました。
唐津という町が唐津城を囲むように発展したことが市内を散策してよくわかります。石垣の道、白壁の道、土塀の道
をそぞろ歩きし、途中でコーヒータイム。
11月2~4日くりひろげられる唐津神社(755年建立)秋季例大祭の「唐津くんち」は14台の曳山が巡行します。今
回は展示場で曳山を鑑賞しましたが、神楽が準備中の唐津神社の社にながれていました。唐津駅前に旧唐津銀行本店の
建物があります。日本を代表する辰野金吾の監修で1912年に竣工。駅前商店街は多くの地方都市と同様にシャッター
が降りて寂しい光景でした。
唐津駅のホームのベンチで電車を待っていると「島川さーん」と呼ばれて、見るとチェックアウトより一足先に出た
私を見送った秘書がいました。
▼太宰府と観世音寺
天神駅で西鉄の特急に乗りこんだところで信号故障でストップ。30分待ってバスで行くことに方針転換。このよう
なケースは「ひとり旅」では「神様の贈り物」と考えます。決断と実行です。怒ってはいけません。
年間700万人が参拝する太宰府天満宮は7年ぶり。本殿左の大楠は樹齢1500年とか。1591年建立の本殿は、わ
が国古来の檜皮葺きで菅原道真が愛した梅の紋章が正面に刻まれています。「東風吹かばにほひ起こせよ梅の花主なし
とて春を忘るな」拾遺和歌集に菅原道真の歌として載っています。
源氏物語にも登場する天台宗の観世音寺は670年ごろ天智天皇が発願とされ、太宰府天満宮から歴史の散歩道を30
分ほど歩きました。観世音寺の国宝・梵鐘は京都・妙心寺のものと兄弟鐘の日本最古の飛鳥時代のもの。宝蔵には5メ
ートルもの馬頭観世音菩薩立像や不空羂索観世音菩薩立像など16体の重要文化財の巨像に圧倒されました。
秋の歴史の散歩道をさらに戒壇院、太宰府政庁跡を巡りました。
帰宅して数日後、博多駅前の陥没事故に驚かされました。
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