ところざわ倶楽部          投稿作品       エッセイ&オピニオン

小さな旅

                          2018 4-12   記 仲山富夫
                                                                                                             

 友が、花見をしようと計画してくれたが今年は葉桜となった。

 予定より早めに着きそうなので、天台宗太平寺から龍門の滝へ向かった。

 天台宗太平寺は川口松太郎の小説『蛇姫様』の舞台である。昭和14年から新聞に連載、大好評を博した。

かつて、衣笠貞之助監督のもと、長谷川一夫、山田五十鈴、原 節子、黒川弥太郎らで映画化され空前のヒットを放っ

たそうだ。その後、渡辺邦男監督のもと、市川雷蔵、嵯峨美智子、中村玉緒らの出演でリメークされたそうだ。

 川口松太郎はこの寺に再度訪れたとき、境内の清掃がなっていないとかで激怒したと言われている。

お寺のすぐ下に龍門の滝がある。



   

天台宗龍尾山太平寺              龍門の滝    



 会社勤めのころは、5月、8月の連休の時に来ることが常であるが、卒業してからは季節に関係なく訪れ花々を愛で

ることができる。滝飛沫は舞い上がっていた。いつ来ても田舎はやさしく迎えてくれる。


 翌日、寝不足気味であるが良い気分であった。

 今回の帰省のもう一つの目的は、松尾芭蕉と河合曽良の歩いた下野路を追体験することであった。

 そんな話をしたら、二人の友が案内してくれることになった。

 友の車に乗りながら黄緑になった小高い山々を眺める。小川は右に左に流れて行く。

 最初の目的地「奇岩 御前岩」へ着いた。ここは、徳川光圀公が領内検分の折、御前岩をご覧になられると「これは

誠に天下の奇岩じゃ」と驚かれて「かかるものを衆目にさらすことは、よろしからず」と土地の役人に命じて、御前岩

の対岸に竹を植えさせた。この竹林を腰巻竹といって直接には見えないようにしたとある(案内板より)


   

 奇岩 御前岩                腰巻竹   

 雲巖寺へ向かう。

 田舎の狭い道である。曲がりくねりながら行く。花桃が赤く白くきれいに満開である。対向車と道を譲り合いながら

進む。広い道に出た。友が言う「町が変わると道が違うんだよな。大田原市は金があるから道も広くなるんだよ」

 30分程で「雲巖寺」へ着いた。

山の中にある禅寺である(JR東日本のCM(吉永小百合主演)の寺です)。私にとっては50年ぶりだ。


   


   


   

                             木啄も庵はやぶらず夏木立  芭蕉


 次の目的地芭蕉の館へ約40分で着いた。

黒羽城址公園の中に在る。あいにく休館日であったが桜が舞い散り、花桃が満開であった。

 城址公園をゆっくりぐるりと散策できた。

   

かさねとは八重撫子の名成るべし 曽良         芭蕉の館へ向かう門     


 今回の最後の目的地、遊行柳へ向かう。

友人は、「芭蕉はこの道を歩いたはずだ」と、バイパスではなく狭い旧道を走ってくれた。

 うれしくなった。「大切なのは良書と友だ(?)」と感謝の言葉を述べたが変なたとえだなと皆で笑ってしまった。

 遊行柳は田んぼの中に在る。まだ水は張られていなかった。


   

田一枚植て立去る柳かな  芭蕉                              

 柳が芽吹いた季節である。

 今回はここまでの下見の小さな旅であった。

 改めて、「芭蕉の歩いた下野路」として旅行の計画をしようと思っている。

 栃木市大神神社(室の八島)~今回下見の名所旧跡~那須町(殺生石)までが道程になろうか。

 やはり、温泉に入りながらの一泊旅行でしょうかね。