ところざわ倶楽部          投稿作品       エッセイ&オピニオン

   ≪一寸庵閑話≫  

           福岡への「良きひとり旅」
                                                      
                         2018 -05 -10  
記 ケン・シェイクスビア

4月某日 「ひとり旅はするものではなく、つくるもの」というドイツ文学者・池内紀さんの言葉に共感して、秘書兼ケアマネを連れずに7か月ぶりに孫のいる九州・福岡へ。昨年9月真っ赤な曼殊沙華が迎えてくれましたが、今回はまぶしい新緑、ツツジと藤の花が勢ぞろいでした。福岡へ行くと必ずおじゃまする渡辺通の鮨「やま中」本店の美味しい鮨と店内の生け花に心が和み「福岡は良かとこさ」と・・・。 


「やま中」店内


4月某日 福岡市は(歴史)博物館に加え、昨年10月には六本松に科学館がオープンしました。最新鋭のプラネタリウムは残念ながら満席でしたが、ちょうど特別展「恐竜」をやっていました。地球が誕生したのが46億年前。恐竜は23000万年前から6600万年前、三畳紀から白亜紀にかけて生きていたとか。全長11mのアクロカントサウルスの骨格には圧倒されましたし、ロボット恐竜ブラキオサウルスに餌をやるコーナーには子どもたちの長蛇の列ができていました。  


恐竜展


昼食は、博多駅ビルの2階のラーメン街道の「一幸舎」で美味しいトンコツラーメン!。大繁盛の店で「博多から元気を!」の法被を着た若い店員たちの声が飛び交っていました。

4月某日「また美味しいイカを!」と思い唐津へ出かけます。
唐津は人口12万人の小さな城下町。今回は天気も良し、東唐津駅から唐津シーサイドホテルまで松浦川沿いに30分歩きます。波おだやかな唐津湾を右手に、イカの活きづくりを一杯やりながらいただくのは最高の「旅のたのしみ」です。


イカの活き造り


食事後は唐津市内を3時間ぶらり。唐津城内には藤の花。小さな河村美術館で青木繁など佐賀出身の画家の絵をたのしみ、唐津駅へ。

   
唐津城                 唐津藩の藩校の門

   
唐津市内                 唐津駅前


▼4月某日 今回持参した文庫本は2冊、五木寛之の「親鸞 下巻」と森本哲郎の『「私」のいる文章』です。息子の家で寝転んで、また家から5分の海のベンチで読書・・・。
 範宴~綽空~善信~親鸞と人生の節目ごとに名を変えた親鸞が、捕らえられた法勝寺から逃れますが、念仏騒動の責任をとらされて妻・恵信とともに、新潟に流罪となるまでを描いた「親鸞」。念仏で悪人も救われると説きます。
 新聞記者からエッセイストに転身した森本は、ジャーナリストの批判者としての主体性に注目。5W1HのうちWhyが一番重要なこと、「事実」の意味をつかまないかぎり事実は理解できないこと、事実は歴史の脈絡のなかでとらえよなどと主張しています。

▼5月某日 芥屋〈けや〉はゴルフ場で有名ですが、キャンプ場や海水浴場、美しい海岸でも人気で、糸島の二見が浦などの景色がたのしめます。
桜井神社、桜井大神宮には静かな落ち着いた参道がつづきます。昭和天皇即位20周年記念植樹の石碑がありました。  


桜井神社参道


 夜、波多江駅近くの「玄海」という鮨店へ。刺身と鮨と酒の3点セット。いい時間をすごしました。夕日がすばらしかったです。  


糸島の夕焼け


5月某日 福岡からのJAL機内でイヤホンからのカレーラス、ドミンゴ、パヴァロッティの「誰も寝てはならぬ」「オーソレミオ」や柳家権太楼の落語「笠碁」を聴きながら、大満足の「ひとり旅」を終えました。

                 「楢山節考」を再読しました

5年半前 HPへの投稿46で「100回目の読書会」を書きました。学生時代の友人たちとの読書会は19928月に始まり、先々月、深沢七郎の「楢山節考」で121回目、121冊目を迎えました。
 69歳の「おりん」は老いて歯がそろっているのは恥と考え、石臼に歯をぶつけて砕きます。70歳になって一人息子の辰平に背負われて楢山参り。雪が降ってきたのを「おりん」は(うまく死ねて)運がいいと喜びます。一方、銭屋の倅、又やんは脚にしがみつく同じく70歳になった父親を谷に蹴落とします。若い時読んだときの印象と今老いて読むのとでは「楢山節考」は違います。ずしんと胸に迫る名作です。     (完)