2018-09-29 記 玉上佳彦
前回の報告では、中国が再生可能エネルギーによる発電に注力している状況について報告した。今回はあまり明らかにされていない中国の原子力発電(核能発電)について、概要を以下に報告する。
中国経済が減速しつつあるといわれているが、GDP 成長率は6%台を維持している中国では、電力需要はますます増加している。これを賄うためには、これまでの主力であった石炭火力発電に代わる電力の供給源として、再生可能エネルギーではなく、原発に注力せざるを得なくなっている。
2017年5月現在、中国で稼働している原発は37基あり、発電容量は約3,200万KW(世界第4位)に達している。しかし、中国の総発電量に占める割合はまだ3.8%である。現在建設中の22基を稼働すると5,500万KWとなり、世界一の規模になる。中国政府としては、長期目標として、2020年に6千万KW、2030年に2億KW(発電割合15%)、更に長期的に2050年には4億KW(発電割合24%)という大規模な原発による発電を計画しているという。
中国初の原発は、1985年に建設が開始され、1994年に運転開始した浙江省秦山原発で、この運転開始をもって「積極的に原子力を開発する」という方針が出された。その後、広東省の大亜湾原発、江蘇省の田湾原発などを中心に、主に華南地域の沿海部(海南省、広東省、福建省、浙江省など)に原発が集中している。当初は内陸部の長江沿いにも、原発の建設計画があったが、福島第一原発事故の影響で、内陸部の計画は凍結・延期されている。もし福島のような原発事故が内陸部に発生した場合、長江沿岸の被害が甚大なものになるということで、沿海部に集中させている。
浙江省秦山原発 |
これまでの中国の原発は、フランス、アメリカ、ロシアなどから導入していたが、最近では、独自技術で開発した新型国産原発「華龍1号」があり、自国以外に、外国への積極的な輸出を進めつつあるという。更に、南シナ海では拡大しつつある中国の人工島向けに、最新型の「小型海上浮動式原子力プラント」も20基計画中という。将来的には、国外への原発輸出を含めて、積極的な原発推進計画が近隣諸国に大きな影響を及ぼすことも考えられる。
(つづく)
本報告書は、日中友好協会の機関紙「日中友好新聞」9月25日号の第2面に掲載
されたものです。
私(玉上)は、昨年6月から日中友好協会所沢支部の理事をしています。
当協会にご興味のある方は私宛に連絡下さい。
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