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中国のエネルギー事情(その3)

中国の原発事情(下)
                                                      
                                                   

                                    2018-10-05 
 記 玉上佳彦

 

中国が原発政策を推進する理由として挙げられるのは、大国としてのエネルギーの安全保障、大気汚染対策、CO2削減のためのクリーンエネルギー増強策、製造大国から製造強国「中国製造2025」を目指すなどのために、原発は必須とならざるを得ない。習近平主席は「原子力産業の競争力を高める」と宣言し、李克強首相も「原子力産業は国の宝」と語るなど、原発推進は中国の基本方針であることが鮮明になっている。

但し、最近の中国の原発拡大政策には、以下のような各種の問題が浮上しつつある。最大の問題は、福島の原発事故で露呈したリスクに対応できるのか、安全性に関する住民の不安を払拭できるのか、地震のリスク、核廃棄物の処理の問題など、日本と同様の未解決な問題を抱えているのである。例えば江蘇省連雲港市での再処理工場建設反対運動で、計画が中止になったこともあり、住民の不信感は高まりつつある。「毒酒を飲んで乾きをいやすのと同じで、事故が起これば取り返しがつかない」と主張する人々がいることも看過できない事実である。



広東省大亜湾原発


順調に進むかどうかわからないが、2020年には高レベル廃棄物地下実験室の建設を目標としており、処理場も35個所の候補地を選定するという。そのほかに、放射能消滅処理(半減期減少)技術の研究も進めているという。そのための新卒研究者の採用を積極的に進めているようだが、原発関係の運用技術と技術者の経験不足が深刻ではないかと危惧する声も出ている。

世界一の電力消費国であり、世界一の二酸化炭素排出国である中国には、世界のトップリーダーとして、原発推進ではなく、風力、太陽光などの再生可能エネルギーによる発電に注力して、世界をリードしていってほしいと、私は期待したい。 (完)


 
本報告書は、日中友好協会の機関紙「日中友好新聞」10月5日号の第2面に掲載
されたものです。                            

私(玉上)は、昨年6月から日中友好協会所沢支部の理事をしています。   
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