ところざわ倶楽部          投稿作品       エッセイ&オピニオン

 ≪一寸庵閑話≫  

        
秋の出雲、松江、足立美術館、福岡を「ひとり旅」(1)

           非日常性こそリフレッシュのもとです 

                                                      
2018 -10 -20  記 ケン・シェイクスビア   
  
                            

▼「葵の会」で9月から及川道之先生のご指導をいただいて「古事記」を読み始めましたので「よし!出雲大社へ行こう」と思い立ったのです。旅程を「出雲~松江~足立美術館~福岡」と決め、ドイツ文学者の池内紀(おさむ)さんの「ひとり旅はするものではなく創るもの」に共感していますので、「勉強しながら美味しいものを食べるひとり旅」と決めたのです。5月のトルコ、7月の台湾は秘書兼ケアマネ兼海外旅行担当添乗員を連れて行きましたが、今回は福岡で合流としました。(-;-

▼10月某日 朝羽田を発ち出雲縁結び空港へ。最近は高知龍馬空港、米子鬼太郎空港、のと里山空港、徳島阿波おどり空港、岩国綿帯橋空港等々地方の空港は名前に凝っています。

空港から出雲大社行きの直通バスに乗ると、爺さま運転手が「ようこそ出雲へ。安全運転しながらしばらく出雲の観光をご案内します。」とおっしゃる。秋晴れの出雲路、気分爽快です。
バスは斐伊川を渡ります。この河の上流で高天原を追われたスサノオノミコトが八岐大蛇を退治して、わが国で最初の和歌『八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣作るその八重垣を』と詠んだとか。


  
斐伊川


    
出雲大社
   

 日本海の強い海風を避けるための防砂の松が各家の西側に植えられているそうです。
40分で出雲大社到着。旧暦10月には全国から神々が集まる神在月です。
 1984年に358本の銅剣が荒神谷遺跡から、1996年には39個の銅鐸が雲南市加茂岩倉遺跡から、そして2000年には出雲大社の本殿を支えた13世紀後半造営の巨大な直径1.35mの杉の柱3本を束ねたものが発見されました。
  出雲大社参観のあと国譲り国引きの神話がある稲佐の浜へ。弁天島は豊玉毘古命を祀っています。途中に出雲阿国のお墓がありました。阿国は出雲大社の巫女だったといわれています。

    
出雲大社参道               稲佐の浜


   
   出雲阿国の墓              古代出雲歴史博物館にて 本殿模型


   
  古代出雲歴史博物館 本殿屋根       古代出雲歴史博物館にて 出雲大社本殿柱



加茂岩倉遺跡からの銅鐸(国宝)



 稲佐の浜から古代出雲歴史博物館へ。入り口の出雲大社本殿支えた巨木の遺跡や再現された本殿の模型、銅鐸などを見る。現在残っている「風土記」は出雲、播磨、肥前、常陸国、豊後の5か国だが、完本ちかくで残っているのは出雲風土記だけだそうです。

 観光案内所で美味しい出雲蕎麦の店「ほしえん」を教えてもらい出雲市駅へ。3段の割り子蕎麦。割り子とは重箱のこと。香り、腰がある蕎麦に蕎麦つゆもまろやかで美味い。今までで2番目に美味しい蕎麦でした。ご主人が今では市内で本格的な手打ち蕎麦店は当店など2軒だけで、つゆも日高昆布と鰹節のミックスと自慢される。この店に来てよかったと思いました。

10月某日 ちょっと小雨。予定の松江行きを変更して「足立美術館」へ。この臨機応変が「ひとり旅」のいいところ。ローカル線のディーゼル車でのんびり安来駅へ。「足立美術館」のシャトルバスで20分。小雨もやがてくもり空に。
 まずじっくり庭園を見学。「庭園もまた一幅の絵画である」という足立全康のことばを随所で感じながら巡りました。だんだん空が明るくなってきて元気になります。

足立美術館にて

    



 横山大観の作品130点を有することで有名ですが、当期間は「水」をテーマに大観と河合玉堂、大観と川端龍子、大観と竹内栖風など絵を対比させながら鑑賞する企画が催されていました。なかなか興味深かったです。たとえば大観47才の「那智乃瀧」より栖風の61才の「瀑布」の方がダイナミックで墨のかすみに勢いを感じました。

 大観は「芸術には眼で描く芸術と心で描く芸術がある。眼で描くのは技術が主になりたがり、心で描く芸術は技術が従とする傾きがある」と言っています。

 北大路魯山人のコーナーでは「心にもない誉めことばをいって、北大路は善人だといわれるよりは,ひとりで坐っている方が心安らかだ」という魯山人のことばが印象に残りました。

                            (つづく)