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ベトナムの娘と孫(下)
                                                      
                                                   

                              2018-10-18 
 記 アジア研究会 当麻 実

 

やがてバスは、1時間余でソンタイバス停に到着した。予定より早く着いた。バス停には花束をもった三歳の女の子(ハミー)がいる。バス停で花束なんて初めての経験だ。ヒュエンとは10年ぶりの対面だ。その後、ヒュエン家族と昼食。

    
娘のヒュエンと3歳の孫・ハミー       孫への土産は紙風船とシャボン玉


 スーパーマーケットにも立ち寄った。お店では持参の荷物は、ボックスに入れて店内に入る。買い物の清算をして、ふたたび係から持参物をうけとるというシステムだ。その昔、ロシアのイルクーツクでも同じ経験をしたことがある。万引き防止ということか……。

 ホテル近くに「ソンタイ古城()」がある。案内板によると1822年に築造されたという。1884年にはフランス軍が城を攻撃した。周囲は幅20mの堀で囲まれている。橋を渡ると、こけむした古い門跡、門を完全に抱き込んだ古木、御殿、18mもある監視塔などがある。とはいえ、古城の大半は破壊された。ここは1994年に国家遺跡に指定されている。



ソンタイ古城(砦)の高い監視塔


 夕方、義兄のターンの家で歓迎夕食。ヒュエンの夫(ハー)の兄になる。同じソンタイに住む夫の両親もかけつけた。ターンは軍人で、英語を話せる。ちなみにヒュエンの夫・ハ―は銀行員。今晩は兄貴の家で歓迎をうけた。

 翌日、朝8時過ぎ出発。ヒュエンの故郷であるバービー地区の実家にむかった。途中、バービー国立公園に立ち寄ってからバービーをめざした。ドライバーはターン、ヒュエン家族とターンの母も同乗している。大きな川沿いを走り、やがて小さな路地に入ってきた。やっと通れる細道の奥にヒュエンの実家があった。

 家族4人が私たちを迎えてくれた。思った以上の広い家に住んでいる。14年前に新築したという。家の前には100本近いバナナ園。畜舎には水牛2頭、豚。ニワトリも放し飼いでかけずりまわっている。のどかなベトナムの農村風景だ。ヒュエンの両親はまだ50代。私より20歳も若い。ヒュエンの妹は看護師、17歳の弟もいる。


    
娘の実家で。みんなそろって記念に     あぐらをくんで家庭料理を食べる



 居間には昼食の準備ができていた。料理名はわからないが、ベトナムの家庭料理が床の上にならんでいる。まずは両親にごあいさつ。地酒もある。ついつい何杯も飲んだ。酔っぱらって、ヒュエンの母に「ダンナさんのどこが気に入ったの?」と聞くと、即座に「あの人は身長が高いし、バレーボールをしていた」(笑い)。初めての顔合わせであったが、すぐになごやかな雰囲気になった。

 短いベトナム訪問だったが、なによりもヒュエンの両親にお会いできた。何回も、お礼のことばで強く握手された。ベトナムの少数民族の少女が高校に行きたい、そのための3年間のわずかな奨学金の援助だった。いまも、こんなに喜ばれ、しかも感謝されるとは思いもしなかった。ソンタイに戻り、ヒュエンの家で休憩した。今回のひとり旅は、なによりも「ベトナムの娘と孫」に会えたことであった。