ところざわ倶楽部          投稿作品       エッセイ&オピニオン

 ≪一寸庵閑話≫  

        
秋の出雲、松江、足立美術館、福岡を「ひとり旅」(2)

         ・・・知ることは想像力と創造力を高めるチャンスです ・・・(#^.^#)

                                                      
2018 -10 -27  記 ケン・シェイクスビア
Ken Shakesbeer
                            

▼足立美術館の滞在は通常2時間と想定されているそうですが、私は3時間!気に入った証拠です。安来駅にもどり駅周辺を散策。ゆったりした空間と時間をたのしんだ後、松江駅近くのホテルにチェックイン、ひと風呂あびていざ出陣。出雲の郷土料理と日本海の海の幸に地酒の熱燗をグビリグビリ。足立美術館は素晴らしかった、自分もメモを取ったり他人(ひと)に訊ねるなど勉強したので満足満足! (^^♪) 


安来駅前

10月某日 日本の県庁所在地で一番人口が少ない都市を争っている人口20万人ほどの城下町・松江は美しい水の都です。さっそくバスの名所めぐり「レイクライン1日乗車券」を買って松江城(1611年堀尾吉晴が築城、別名千鳥城)へ。5つの国宝の城のうちの1つで、私の故郷松山のお城も正岡子規が『春や昔15万石の城下かな』と詠んだ名城です。。望楼に登ります。 

   
松江城望楼から宍道湖              松江城       


    
堀川遊覧船から
   

 堀川遊覧船に乗って50分で1周。お濠に架かる17の橋の下を通りますが、4カ所では船の屋根を下げなければ通れません。座る姿勢から寝る姿勢に。(^_-) 
  小泉八雲記念館から武家屋敷への東西500メートルは江戸時代の風情が残る通りで「塩見縄手」と呼ばれています。

    
   小泉八雲記念館             小泉八雲旧居 高浜虚子の句


   
 武家屋敷にて                  塩見縄手  

小泉八雲〈ラフカディオ・ハーン〉は記者の時、「古事記」を知り1890年に来日。日本が大好きで、松江の風土、文化、風習に感銘。セツと結婚し日本人に帰化します。セツが話す地元に伝わる怪談をもとに「耳なし芳一の話」等を著します。記念館のとなりに小泉八雲の旧居があり、昭和7年高浜虚子が訪ねたとき詠んだ 『くはれもす八雲旧居の秋の蚊に』がありました。八雲旧居の近くに広い「武家屋敷」があります。外人の娘さんにシャッターを押してもらいました。頼むときは英語で、フランス人とわかったので「メルシー」といったら「ドイタシマシテ」だって。なんやねん。(*^:^*)

松江松平藩第7代藩主・松平治郷は、藩政改革と松江を茶の湯の町にした大名茶人・不昧公(ふまいこう)として親しまれています。没後200年を記念した企画展覧会が島根県立美術館で開催されていました。国宝・大井戸茶碗や梅花天目、書などが展示されています。常設の美術品も見学、なかでも藤田嗣治の『仏印風景』は、彼がフランスから帰ってベトナムのフエに旅行した時に「王宮への路」として描いたもの。私もフエに行ったのでその光景を思い浮かべながら鑑賞しました。写真はOKでした。

    
   藤田嗣治の画                宍道湖     

松江は京都、金沢とともに3大和菓子処です。私も秘書に頼まれた桂月堂の『薄小倉』を求め、県立美術館から散策がてら本店へ。12個入りと8個入りがあり迷って秘書に電話。「12個入りを」「今どこ?」「唐津に1泊してこれから福岡に帰る」とか。秘書も「ひとり旅」している。(^_^)
 若い女店員から「どうぞ試食を」といわれ「薄小倉」と「出雲三昧」をいただく。「お茶をどうぞ」とくりゃあ「ハイ!お買い上げ!」でも美味しかったですね。(^_-)

10月某日 朝10時にチェックアウト。松江城大手前から昨日歩いて気に入った塩見縄手まで、逆方向に歩き、さらに松江堀川地ビール館へ。松江牛とポテトフライでピルスナービールを。地ビール全国第3位の実力を香り、色、味、のど越しに感じて満足。

松平藩の菩提寺月照寺へ。広く静かな境内を歩き、不昧公の墓にたどりつきます。八雲の怪談に出てくる大亀、本当は不昧公が父の徳を称えて作ったとか。


月照寺の大亀 


 
有名な宍道湖の夕陽は見られませんでしたが、出雲から福岡へ向かう36人乗りのプロペラ機上から夕陽を見ました。九州に入って暗い洋上を低く飛ぶときに詠みました。

 『小型機で海の上飛ぶ肝だめし』

    
    小型機JAC36人乗り         出雲から福岡に向かう機上からの夕陽 


 HP投稿46で学生時代の友人たちと27年つづく読書会について紹介しましたが、先月123冊目はノーベル文学賞受賞のカズオ・イシグロの『日の名残り The Remains of the Day』。

イシグロは、英国貴族邸の老執事スティ―ブンスが短い旅に出て、長い間仕えたダーリントン卿への敬慕の念、執事の鑑だった父への想い、女中頭への恋心、屋敷で催された会議などを美しい田園風景とともに描きます。最後に老執事は自分の生き方を悔いますが、「人生たのしまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ」と桟橋近くのベンチで会った男はいって去って行きます。私の好きな丸谷才一は、「わたしは、男がこんなに哀れ深く泣くイギリス小説を、ほかに読んだことがない。」と解説を結んでいます。翻訳もうまいので、とにかく読みやすい。久しぶりに感動した作品です。

10月某日 福岡で必ず行く鮨処「やま中 本店」(磯崎新の設計)へ息子夫婦、孫と秘書と5人で。予約でも満員でちょっぴり贅沢ですが2階へ。美味しくいただきました。生け花と博多人形師・西頭哲三郎の作品「杜若」が飾ってありました。 

    
       やま中にて            やま中にて 博多人形師…西頭哲三郎の作品 


10月某日 テレビ東京の「美の巨人たち」の「高島野十郎『蝋燭』」(9月29日放送)に惹かれ、それが福岡県立美術館に展示されているのででかけます。天神で地下鉄を降り川沿いに美術館へ。作品はタテ22.7cm ヨコ15.6cm 板に油彩で精緻そのままな「炎」でした。高島は東大農学部を首席で卒業するも研究者の道に進まず画家になります。画壇と縁を切りひとり描きつづけます。一生のモチーフは「炎」で『蝋燭』は40枚以上描いたとか。


高島野十郎の画『蝋燭』 

 秋の数日を「ひとり旅」をたのしみ、満足して無事帰宅しました。

『ひとり旅元気に帰り浴びる風呂』            (完)