2020-4-16 記 玉上佳彦
4月8日に首都圏などに、コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が発令され、外出規制を要請しまし
た。同時に、政府や東京都は、企業にテレワークを推進するように要請しましたが、なかなかテレワークは進んで
いないようです。
その原因の一つは、日本の「はんこ文化」にあると思っています。私は、2015年9月20日付けで、ところざわ
倶楽部のHPに「印章の話(その1)」を投稿しました(以下の資料を参照下さい)。
この投稿で、私は中国では、はんこが全く使われていないことを報告しました。現在もはんこがないと通用しな
い日本の現実を「未だに、はんこの⽂化を残している不思議な国だと思います。役所は、三文判でいいからはんこを
押しなさいと義務付けていますが、100円ショップで売っているはんこでも押印していればOKというのは、理解に
苦しみます」とまとめました。
現在でも、日本の多くの役所や会社は、はんこがないと書類として認められないというナンセンスな世界が当たり
前になっています。契約書などの一般的なビジネス文書や社内の稟議書や経費精算まで、サインではなく、はんこ
がないと処理できない世界が、テレワークを妨げている一因だと思っています。契約書などの収入印紙とその押印
も外国では理解できない世界です。
このような場面は、海外駐在経験者は、嫌というほど多くの経験をされているかと思います。本社の稟議を通す
(=はんこを並べる)までにたいへん時間かかかり、商機を逃すということがあるのです。現地で判断して、決済
し、事後承諾ということは、基本的に日本企業は許してくれません。
私は、現在中国吉林省の食品会社の顧問をしていますが、もちろんはんこは使いません。但し、社内の顧問契約文
書や取引上の契約文書などには、サインが必要になりますが、お互いに面会してサインする必要はありません。電
子メールを利用して、書類にサイン済のpdfファイルを送ることによって、契約が完結しています。この方法を利用
すれば、日本でもテレワーク化はすぐにでもできることです。これが、なかなか進まない理由は、役所が依然とし
て、はんこ文化にこだわり続けているからです。例えば、在留外国人の登録関係書類などに、サインを認めず、は
んこを作らせて、押印させるという信じられない現状が未だにあることです。但し、最近では、来日外国人が日本
土産の記念として、カタカナやアルファベットのはんこを作り、持って帰るということもあるようです。
このようなはんこ文化を、日本独特の文化として評価する人もいるようですが、国際的に通用しないものを固守
するのは、どうかと思っています。 最近知ったことですが、「はんこ議連(日本の印章制度・文化を守る議員連盟
)」というのがあるようです。呆れたことに、その会長は現職のIT担当大臣竹本直一だという。これでは、日本の
テレワークが進まないのは明らかだでしょう。
別件ですが、「令和」という年号表記も、全く国際的に通用しないので、役所関係も含めてすべて、国際標準の
西暦表示に統一すべきだと私は思っています。
蛇足ですが、私の運転免許証の有効期限は「平成33年5月13日まで」となっています。どう思いますか?
笑ってしまうのは、私だけでしょうか。
日本で、テレワークが進まないもう一つの原因は、役所や企業のICT化が進んでいないことでしょう。上述した
ようなIT担当大臣がいるようでは、日本は世界からますます遅れていくのではないかと危惧します。
会社によって、ICT化はまちまちですが、優秀なシステムエンジニアが社内にいるかどうかで大きな差が出てきま
す。
企業が、テレワークを進めるためには、安全な社内ネットワークを構築し、セキュリティを強化した状態で、社外
でも接続できる環境(端末を含めて)を構築する必要があります。そのための費用はかなりかかります。もし社内
でシステムエンジニアがいない場合は、外注することになりますが、この種の外注費用は、かなり高額になるため
トップが決断するのが難しくなっているのが中小企業の現実だと思います。
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