▼カラヤンの「アレグロ」がなぜあんなに速いのか?それは彼がレーシングカーのライセンスを持っていることやジェット機の操縦をすることと無縁ではないとか。
19世紀に発明された「メトロノーム」をオーケストラに最初に使ったのはベートーベンです。
ベートーベンの『第9交響曲』の演奏時間については、いろいろ歴史があります。初演は1824年ウイーンで彼自身の指揮で、翌1825年ロンドンでは「63分」という記録があります。ちなみに私が持っているCD『カラヤン指揮ベルリンフィル』は66分54秒です。サイモン・ラトルはベルリンフィルを68分19秒で演奏しています。
1951年フルトヴェングラーの『バイロイト・ライブ録音』は74分です。
ベートーベンの『交響曲第6番 田園』をカラヤンはベルリンフィルで34分31秒、フルトヴェングラーは42分54秒。第1楽章アレグロ・マ・ノントロッポ『田舎に着いたときの愉快な気分』をカラヤンは8分31秒、フルトヴェングラーはゆったりと11分25秒です。
第3楽章、第4楽章はアレグロですが、カラヤンは3分3秒、3分23秒で演奏し、フルトヴェングラーは5分34秒、3分23秒です。
なおフルトヴェングラーがカラヤンを嫌っていたことは有名な話です。
ベートーベン 交響曲第9 カラヤン指揮 ベルリン・フィル CD
フルトベングラー |
▼LPレコードからCDへという歴史もおもしろいです。
ソニーとフィリップスはCDの開発を共同ですすめます。フィリップスは『直径11.5cm 60分』、ソニーは『12cm 74分』で対立。ソニーの大賀副社長は親交のあるカラヤンに『オペラ1幕分、あるいはベートーベンの第9が収録できること』を云ってもらったとか。クラシック音楽の95%が75分あれば収められること、第9もほとんどの演奏が60分を超えているという調査結果もあって、ソニーの12cmに決まったそうです。
ソニーの第1号機・世界初のCDプレーヤーは1982年10月に16万8000円で売り出されました。
▼作曲家の「書き癖」という難題があります。
シューベルトの「未完成」第1楽章終わりの5小節目に記されているのが、アクセント(>)か ディミヌエンド( ) か?という難題。
名指揮者・岩城宏之はアクセントと考え、トライしました。私のカラヤンのCDではディミヌエンドでした。(HP投稿356参照) 岩城は『スコアを睨んでいるとどっちでもよいという気になった。いずれも音楽として美しく・・・。天才の気軽な不始末には、後世のわれわれがいつも泣かされる』と書いています。 (岩城宏之『楽譜の風景』)
ドヴォルザークの『交響曲第9番 新世界』第1、第3楽章の『半音あげるシャープ(♯)か、元にもどすナチュラル(♮)か?これもドヴォルザークの『書き癖』で、どちらが正しいのかは永遠の謎・・・。
▼ハイドンの「交響曲 驚愕」第2楽章がピアノで始まり16小節目のティンパニーのフォルティッシモを、当時の聴衆が、現在の100名のオーケストラの最大音量で聴いたら、それこそビックリするでしょう・・・。
ヴェルディの『ナブッコ』の『行け わが想いよ 金色の翼にのって』は『第2のイタリア国歌』といわれています。私は現役の時、新宿文化センターで東京シティフィルの演奏をバックに、合唱で歌ったことがあります。
『行け 和が想いよ 金色の翼にのって』 合唱用楽譜』 |
ハイドンの『弦楽四重奏曲 皇帝 第3楽章』は、『第2のオーストリア国歌』として国民は「神よ フランツ皇帝を護りたまえ」と歌っています。かつて覇者・ハプスブルグ帝国だったオーストリアは、今人口880万人の小国です。「オーストリア国歌」は「山岳の国 大河の国」と美しい国を歌っています。
何はともあれ名曲をじっくりたのしんでコロナ禍をしばし忘れられたら・・・・。 (完)
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