ところざわ倶楽部          投稿作品       エッセイ&オピニオン


   
     
   「宇宙芋」   
                     
                             2021-2-24 記 岡本 詔一郎
                                       

   

岡ちゃん植えて見ない!

 15年ほど前、学習センターでオカリナ同好会を立ち上げた時に、サクラ!になって貰った小林さんから、「宇宙芋植えて見ない」と声を掛けられた。何のことか分からず、何度も聞き返した気がする。小林さんが薦めるものは何でも聞いていたので、「良いよ!植えて見る」と言うと小林さんが家に入り、種芋を2個持って来た。今まで見たことも無い変てこな形をしていた。


宇宙芋とは

 野老(ところ)に生る「むかご」が大きく成ったようなもので、卵ほどの大きさ!色は似ているが形がデコボコも多く、へんてこりんで醜い形をしている。食べ方は普通の芋と同じようにして料理し食べられる。茹でると中は黄緑気味で見かけは良い。姿と違って、味も良い。しかし、ちょっと食べるとなると躊躇したくなる。したがって、あまり普及せずに食べられていないのかも知れない。



茂り過ぎ

 2個貰い、食べないで、2個とも畑の一番目立つところに春植えた。印は点けて、支柱もしていたが、何時まで経っても芽が出ず、初めてのことでもあり心配した。芽が出てからは思ったよりも元気良く成長し、支柱に這わせて花が咲くのを待った。茎は茂って来たが一向に花や実が生る気配が無く、気を揉んだ。やっとそれらしい花芽?が出て印を付けて、畑に行く度に観察して楽しんでいた。


ところが

 見るも無残に、刈り込まれ、当然実が生った茎も何も無い、綺麗さっぱり!犯人は妻だった。怒ったら、道路の傍でみんなが見るとこだから見っとも無いから切ったとのこと。これで二度目、昔、畑の一角を田んぼ風に稲を植え、良い調子に育っている時、跡形もなくやられちゃった。やられてしまったことを怒っても仕方がないから、宇宙芋も一年目は諦めた。



中央の芽の付け根に実?


2年目

 小林さんに、顛末を話したら、またやるから育てたら!と今度は3個頂き、一個は茹でて試食した。美味しかった!1年目の経験を活かし、妻対策もやり、畑の奥のフェンス沿いに目立たないとこに植えた。芽が出ない場合の為に、朝顔の種も植えて置いた。やっぱり芽が出るのが遅かった。


あれ何ですか?

 通りかかる人から、あれ何ですか?あの茂っていて葉っぱの大きいの!良く聞かれた。そういわれて見ると異常に茂り凄い形をしていた。そんなになっても一向に実を付けず諦め掛けていた。ところが昨年見たような小さな「むかご」の様な実が一個!嬉しかった。写真にも傷めないように葉を避けて撮った。朝顔も一緒に茂った。


   
     右上宇宙芋の葉        左上の白く見える後ろが左の写真

何時まで経っても

 行く度に、葉や枝をかき分けて見るけれども、一向に実らしきものは見付からず、茂り過ぎると生らない場合が、他な野菜の時は有るので心配だった。ところが、9月に入ってやっと一個それらしいものが見つかった時はホッとした。一旦生りだすと次々見付かり、大きく成り、生り易いように枝を両サイドに広げてやったりした。ちょっと小さいが2個ほど早めに収穫した。食べないで、保存。どんどん一杯実も付き大きく成って来たので師匠の小林さんに知らせたくて電話したが通じず、残念だった。


比較的大きく成った実

菜園をやっている同僚に

 結構、収穫出来そうなので、自慢をしたくて、菜園をやっていそうな人を見付けて、「宇宙芋植えて見ない」と声を掛けた。しかし、反応は今一だった。自分も見てくれも悪いし、収穫数量も限りがあり、宣伝・自慢してばかりだった。やると約束した者にも早くやり過ぎると冬越しが出来ずに腐らせたら大変!と思ったりして、まだ誰にも分けてやっていない。収穫する度に、新聞紙に包んで一括保存している。


手前の蔓に3個、後ろの蔓の左に1個



収穫した宇宙芋 下3個は生り口上 上4個は裏 食べる気起こりますか?


ところが


 グランドゴルフの同僚から、「小林さん知っている」と何か変な感じで聴いて来たので、どうしたの!と聞くといや何でも!と何も言わない。変に思って、畑の帰りに努めて小林さんの家の前を通るようにした。菊盆栽が上手で、庭に出てよく手入れをしている。菊の手入れがちょっと足りないな!と思いながら、時が経った。ところが、家を覗いたら、扉のとこに立って菊の手入れをしているのをちらっと見かけた。何時もの様に近づいて吃驚!別人が立っていた。見る影もなく痩せ細り、話し掛けるのも憚られ、「病気していたの!」「うん」次の言葉が出ず、体に障るといけないので、早めに退散した。


小林さん知っているよね!

 隣の荒畑さん、小林さんの菊仲間から、フェンス越しに近寄って来て、「小林さん亡くなったよ」と知らされた。ビックリ仰天!あれが最後だったか。残念。丸々と太って、チョモランマ登山に備えて、ウオーキングを欠かさなかったのに!結局、今年の宇宙芋の報告・自慢も出来ずじまい。最も気心が知れ、何でも話せる間柄だった。


どうしよう

 宇宙芋、もう育てるのを止めようか?迷っている。人にやるのは、諦め、自分の畑に、収穫したいも全部植え、天国の小林さんに自慢したいな~

令和3年2月11日 記


追記 2021.2.16

 午前中大根を収穫に行った帰りに、宇宙芋を見せていただいた小林さんの畑の横を、通りかかったら、ブロックで囲われ、今にも家が建ちそうになっていた。あれからまだ2年にもならないのに、小林さんも居なくなり、宇宙芋を見せていただいた畑も無くなっている。寂しい!


収穫後、枯れてしまった姿。令和2年12月17日 撮影