▼俳人で朝日俳壇の選者でもある長谷川櫂は、「言葉には『意味』と『風味』という2つの要素があり、言葉の意味は訳せても、風味を英訳することは難しい」と云います。
たとえば 明ぼのやしら魚しろきこと一寸 芭蕉 をイギリス生まれの俳句研究家 Rブライスは
In the morning twilight The lancelets, Inch-long white things. と英訳しました。
彼は約40年間日本で暮らし、1964年に65歳で亡くなりました。英文学を大学で教えながら俳句を研究、紹介しつづけました。
長谷川はlanceletはナメクジウオであり、しかも複数表示であることに違和感を感じると云います。白魚はJapanese ice fish とも訳されています。ナメクジウオで外人は日本人がイメージする白魚をイメージできるでしょうか・・・。
▼The first winter shower, My name shall be “Traveller”. 旅人と我名よばれん初しぐれ これも芭蕉の句です。長谷川は『初しぐれ』がthe first winter shower ではなぁと慨嘆します。
芭蕉は1687年冬 江戸を発って正月を故郷・伊賀上野ですごそうと『笈の小文』の旅に出ます。名古屋で連句の会に出て、降り出した雪のなかをお先にと弟子たちに告げて・・・。
いざさらば雪見にころぶ所迄 と『かるみ』を詠みます。
On a journey to the Capital, Only half the sky traversed, With
clouds foretelling snow.
京まではまだ半空や雪の雲
雪の降りそうな空を見上げては、まだ都への道は遠いと思う心もとなさが『半空(なかぞら)』です。『半空』という言葉、空であって空でないような感じが外人にわかってもらえるだろうか?日本語には日本語でしか表せないものがあると長谷川は云います。私も同感です。
▼『おくのほそ道』の最初の句 行春や鳥啼き魚の目は泪 の『魚が泣いている』とは何か? 調べました。芭蕉の支援者・杉山杉風、彼は日本橋で魚問屋をやっており、杉風は泪を浮かべて芭蕉の旅立ちを送ります。芭蕉の杉風への感謝の俳句です。魚は魚屋の杉風のことなのだと今回知りました。私は『curiosity(好奇心)を持つこと』を大事だと思っていますが、今年ノーベル賞をとった真鍋淑郎さんが『好奇心を持ち続けること』を云われていたので、『やっぱり!』と思っています。
▼この7月ワクチンを打ち終わって福岡に行き、聖福寺の帰りに『承天寺通り』を歩きました。そこにデーンと構える『千年門』は福岡のさらなる繁栄を願って2014年に建立されたものとか。
承天寺通り 千年門 |
(完)
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