ところざわ倶楽部          投稿作品       エッセイ&オピニオン

 ≪一寸庵閑話≫  

     
     酒はホロ酔いがベスト 

           
飲み方は人さまざま
            
                                                      
2021 -10-23  記 ケン・シェイクスビア   

 

▼所沢・下富に歌碑がある若山牧水。故郷・宮崎を愛し、富士を愛し、旅を愛し、そして酒を愛し
 た歌人です。

       白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり

       足音を忍ばせ行けば台所にわが酒の壜は立ちて待ちをる

      
人の世にたのしみ多し然れども酒なしにしてなにのたのしみ

 20代で酒の依存症になり、1日1升の日本酒を飲んで肝硬変で亡くなりました。43歳。
 若山牧水の誕生日にちなみ8月24日は『愛酒の日』。名前を進呈しましよう。若山僕酔と・・・。



若山牧水


▼芥川賞作家・又吉直樹は中学2年の時読んだ『人間失格』以来、太宰治に取りつかれたそうです。一方、18才の時太宰は芥川の自殺を知り、その影に生涯つきまとわれます。
それはさておき、太宰は『ふだんは家の内に一滴の酒も置かず、吞みたい時は、外へ出て思う存分呑む、という習慣が、ついてしまったのである。(略、友人3人がくる。まず六時半に津軽のW君が来た。)私も、久しぶりに津軽訛を耳にして、うれしく、こちらも大いに努力して、津軽言葉を連発して、呑むべしや、今夜は、死ぬほど呑むべしや、というような具合いで、一刻も早く、酔っぱらいたく、どんどん吞んだ。七時すこし過ぎに、Y君とA君とがそろってやって来た。私は、ただもう呑んだ。感激を、なんと言い伝えていいかわからぬので、ただ呑んだ。死ぬほど呑んだ。十二時に、みなさん帰った。私は、ぶっ倒れるように寝てしまった』。

結局、太宰は家で2日続けて4人で4升を空けたとか。



太宰治


▼池波正太郎の父は大酒飲みで、気が向くと一夜に軽く2升飲んだという。池波が生れた雪の朝、『男のお子さんが生れましたよ』と産婆さんが2階に知らせに行くと、寝ていた父は『寒いから後で見ます』といったそうな。『私は父ほどの酒飲みではないけれども、一日とて酒を飲まぬ日はない。晩酌は日本酒なら2合。ウイスキーならオンザロックを3,4杯というところ』。飼っていたシャム猫が日本酒好きで、小皿についでやると、ピチャピチャとたのしんだという。



池波正太郎



▼吉川英治は「強いばかりが酒飲みではないと思う。僕は酒のみを以て自負している。酒を愛すことでは人語に落ちないとしている。(略)僕にも酒の憲法はあるが、その第1条は『舌を洗うために』である。僕の酒は自ら『舌洗い』と称しているからだ」。


▼嵐山光三郎は云う。『日本酒には、しんみりするエキスが入っている。ワインは憂愁な酒だ。バーボンは元気がでる。スコッチウイスキーは、気がひきしまる。ジンは滅入る。ウオッカは理くつっぽくなる。老酒は嬉しい酒である。ラムは旅に出たくなる。テキーラは踊りたくなる。焼酎は暴れたくなる。シェリーは腹がへる。ブランデーは物思いにふける。しかし、これはイメージであって、テキーラで荒れるときもあるし焼酎で楽しくなるときもある。ようは飲む心情の問題だ。(略)ビールはどうか。ビールは楽しい酒である。


嵐山光三郎



▼私は現役時代、2軒目以降バー、クラブでは『ウイスキーの水割り』が定番でした。巣ごもりの今、ウイスキーのストレートをチビリチビリ。バランタイン12からオールドパーへと『curiosity』を生かしてたしなみ中!医者から『醸造酒(ビール、日本酒、ワイン)は週3日以内』と指示されているので。蒸留酒の焼酎やウイスキーで3日、休肝日が1日というスケジュールになるわけです。好きなビールはハートランド。日本酒の最高は〆張鶴と思っていますが、最近、山形・出羽桜や世界一になった福岡・八女・喜多屋の大吟醸・極醸(息子が贈ってくれました)に浸っています。酒はホロ酔いがベストです。

▼7月に福岡へ。ひとり香椎宮。ヤマトタケルの子 仲良天皇は神宮皇后と結婚、香椎ですごしたとか。広い境内は静かで歩き疲れた体をやすめました。    


   
桜門                       本殿



中門



                                  (完)